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「……なるほど、貞虎の考えはよく分かったよ」
呆れた様子で申一郎が言う。
「お前がそういうバカなのは長い付き合いだから分かってるつもりだ。だからもう何も言わないよ。だけどな……」
そしてオレの肩をポンポンと叩く
「もう女の事でオレを頼るのは止めてくれ。オレはこれ以上女の子を紹介する気はないからな」
「そ、そんな!」
「お前の言うとおり、高校進学はちょうどいい機会じゃないか。高校デビューでも何でもして、後は自分で頑張れよ」
「ちょっと待っ……」
「ともかくオレはもう知らないから」
「ぐぬぬ……」
くそ、はっきり断られた。
オレの思いは申一郎には届かなかったか……。
だが確かに進学はいい機会だ。
高校には新しい出会いが待っているはず。
カノジョなんて無縁の中学時代だったけど、それはこのあだ名のせいで恋愛なんてできる雰囲気じゃなかっただけ。
『童貞探偵』の事を誰も知らない高校に行けば、オレだってカノジョの一人や二人、簡単にできるんじゃないのか――?
「……よし分かった。もう申一郎には頼らない。自分で何とかしてやるよ!」
目指せ夢のリア充!
これからの3年間、アオハルな高校生活を送ってやろうじゃないか!
2
白羽矢高校。
改築が行われて見た目は新しいが、それなりに歴史のある学校だ。
都心に近いが自然も多く残っている、そんな程よい場所に建つ、公立では上位の進学校。
オレがこの学校を選んで進学したのには訳がある。
まずは地元から離れた立地であること。
そして同じレベルの進学校が近所にあること。
同じような高校が二つある場合、大抵は近くにある方を選ぶ。
つまり、オレの地元からこの高校に進学するヤツは滅多にいないという事だ。
童貞も探偵ももううんざりだ。
オレのあだ名を知ってる者がいない学校で、オレは人生をやり直すんだ――!
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