第1章「名探偵は童貞卒業を夢見る」

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* 「新入生の皆さんを心から歓迎いたします。今皆さんは新しい高校生活の夢を胸に――」    入学式――。  体育館の舞台上では校長の挨拶が続いている。  ……が、そんなもの当然のごとく聞いちゃいない。  そんな事よりも……と周囲を見回す。  オレと同じ新入生が、ずらりと体育館を埋め尽くしている。  ……うぅわっ! 可愛い子多くね?  この学校、女子のレベルがスゲー高いぞ。 「何をニヤニヤしてんだよ?」  隣の席の申一郎が聞いてくる。  申一郎は何故か、オレと同じ白羽矢高校に進学することを選んだ。  どうしてか理由を尋ねると「貞虎と同じ高校に行きたいから」と返事がきた。  さらに「そんなにオレの事が好きなの?」と聞くと「まあね」と答えられ、「もしかしてホモ?」と聞くとぶん殴られた。  セーフ、どうやらホモではないらしい。 「どうせ可愛い子ばかりだからニヤニヤしてたんだろうけどさ」  さすがは幼馴染、オレの考えが読まれてる。  だけどこの美人率にはテンションを上げざるを得ない。  消去法で選んだ高校だったが、これは大正解じゃないだろうか? 「女の子はかわいいし、オレの黒歴史を知る人間はいないし……。いける! これなら黒歴史をリセットしてやり直せるぞ!」 「それはどうかな?」  ……何だと申一郎?  オレの幸せな未来予想図に異を唱えるつもりか? 「ほら、壇上を見てみなよ」  言われて体育館の舞台の方へ目をやる。  すると……。 「次は新入生代表の挨拶です。新入生代表、水瀬辰姫(みなせたつき)さん」  そんなアナウンスと共に、一人の女生徒が壇上に上がってきた。  ――ハッと息をのむ。  オレだけではない。体育館の生徒全員が、彼女に目を奪われた。  飴色の長いストレートの髪に、透けるような白い肌。  遠目でも分かる整った顔立ちは、『まるでお人形さんのよう』という比喩がしっくりとくる。  この学校のレベルの高い女子生徒の中でも、際立って目立つ美少女だ。
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