第四話

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「そうだ、谷川とも知り合いになってたんだね。さっき、久しぶりにスマホの電源入れて連絡したら、いろいろ教えてくれたよ」  谷川とコンタクトを取っていたことを、敢えて朔には伝えていなかった。いずれは事情が伝わるだろうから――というのは単なる建前で、勝手に秘められた過去に触れようとしていた罪悪感から逃れたかっただけなのかもしれない。 「言ったんですか? その、自殺のこととか」 「元気だから心配すんなってだけ。アイツ、今時珍しいかもってくらい友達思いだから、素直に白状したら絶対すっ飛んできちゃうよ」  声が微妙に上ずっていた。きっとすべてを白状するには、まだ時間が必要だろう。事情は知らなくとも、何となくわかる。  谷川から来ていたメールを思い返して、内心で頭を下げる。 「……でももう、逃げてたら……」  続けられたつぶやきに、思わず訊き返そうとした時だった。 「っ朔、さん」  左腕に暖かな感触が回る。別の生き物のものみたいで、どう落ち着かせればいいのかわからなくなる。左と右で、汗のかき方が全然違う。 「……緊張しすぎじゃない?」 「だ、だって、そりゃあ当たり前っすよ」 「さっきキスマークつけたくせに?」 「もう、勘弁してください……!」  これ以上煽られたら我慢が効かなくなる。暴走して、引かれたくないんだ。本気の恋なんだ。     
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