第六話 ※R18

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 枕を握りしめて頭を左右に振るたび、黒い髪で彩られた首筋が視界を煽る。見えるところにつけたら俊哉が困るだろうと思いつつも、止められない。  ――この人は全部、オレのものだ。 「な、に……?」  薄い痕が生まれた箇所を人差し指でなぞって、律動を再開する。枕にあった両手をそれぞれで絡めると縋るように握り返される。目尻と口端から流れ落ちる雫が、自分のためにあふれていると思うだけで目元が熱くなる。 「……泣いてるの?」  微笑みながら問われて、初めて気づいた。  泣くなんていつ以来だろう。自覚したらいたたまれなくなってきた。 「自分でも、よくわかんないです。俊哉さんとこうしていられて、幸せすぎなのかも」 「俺だって、一緒だよ。……本当に好きな人とするのって、こんなに満たされるんだって」  だから、もっと好きにして。  もっと、高史で満たして。  飽きるほど互いの身体を貪って――夢見心地を覚ます音でまぶたを持ち上げて映った、胸元でくるまる俊哉の穏やかな表情に、また涙がこみ上げそうになった。
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