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「俺のこといつも気にかけてくれるのはありがたいけど、結構心配してるんだからね。ほとんど休みないし、相変わらず掛け持ちバイトしてるし」
何だか、肩身が狭くなってきた。心配をかけていたことに気づかないとは、意外と余裕がなかった証拠だ。
「……俊哉さんが本当に心配なんですよ。今もまだ、うなされてたりするし」
あの人の影が完全に消えるには、もう少し時間がいる。
背後に立ってそっと抱きしめた。あたたかい海風と混じった俊哉の匂いが鼻腔をかすめる。
「……大丈夫だよ。強がりじゃなくて、本当に。だから、これからは高史も支えさせてよ」
回した腕に、ぬくもりが重なる。
「それに、俺も高史に出迎えてもらったり、おかえりって言われたい」
あまりに可愛すぎる願望に、つい疑ってしまったのは仕方ない。悟られたら機嫌を損ねるのは必至だから、さらに引き寄せることで誤魔化す。
「……俊哉さんには、かなわないっすね。いろんな意味で」
「これでも、お前より年上だからね」
再び持ち上げた視線の先に、夜の太陽がある。
遮るもののない輝きは、半欠けとは思えない力強さをもってこちらを見返し、照らしていた。
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