299人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
第二話
初めての同居生活は、男同士でもどこかくすぐったく感じるらしい。
朝は見送ってくれる。帰ってくると、洗濯は済んでいて夕飯もできている。「気をつけて」「おかえり」という声が絶対にある。
最近は、昼は外食ばかりだというのを気にして、弁当まで用意してくれるようになった。
互いへの緊張感はだいぶ薄れてきたように思うが、朔の表情には未だ悲痛の影が纏わりついている。時折見せてくれるようになった笑顔も心からのものではない。
『っ、う……』
『朔さん、朔さん』
『やめ……も、いや、だ……』
時々、夜中にうなされている姿を知ってから、ますます秘められたままの「自殺したい理由」を知りたくなる。
けれど、無理に聞き出すだけの度胸はなかった。
少しでも口にすれば、この生活が終わってしまいそうな予感がしたのだ。
――何となくの形で続いている朔との日々を、今はなくしたくないと思っている。
最初のコメントを投稿しよう!