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「煩わしいな」
最初に頭をよぎった正直な言葉がそれだった。
忙しい年度末に1日とはいえ休暇の算段をつけなければならない煩わしさも勿論あった。でもそれよりも、娘にとっての一大事の場に僕自身が関わらないといけないことがなによりも重く、そして煩わしく感じた。
僕はこの一年、家族を包んだ薄皮のような娘の受験が早く終わればいいなと思いながら、合否の結末が出る瞬間を思うといつも胸がきゅっとすぼまる思いがした。できればその日が来ることから逃げたかった。普段は家族思いの父親のような顔をしていても、いつも家族のちょっとした煩い事からはうまく身をかわしてきた僕だ。
小さい頃から、応援しているプロ野球チームがピンチになると、ついテレビのチャンネルを変えてしまう癖は今でも変わらない。そうしてしばらくしてから、そっとチャンネルを戻してその結果を確かめるように、できれば娘の受験結果もそんな感じで受け取りたかった。
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