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「忘れ物はないか?」
助手席に乗り込んできた娘に運転席から聞いた。
「発表を見に行くだけだから今さら忘れ物なんてないよ」
口元だけで笑って僕と眼をあわすことなく娘が答える。
「でも、受験票の控えとか要らないのか?自分の受験番号ってちゃんと憶えてるのか?」
「受験番号を忘れる訳ないでしょ。273番」
ちょっと邪魔くさそうに言われてしまった。
「けど、ほんとに273番で間違いないのか?勘違いしてたら大変だぞ」
シートベルトをしながら、少し不安になって聞く。
「これだけは間違えるわけないじゃん」
そう言われて
「本当に間違いはないのか?ちゃんと確かめたのか?」
落ち込む娘を前にして、ただただうろたえる父親の情けないイメージが不意に頭をよぎり、なにを縁起でもないと僕は慌てて打ち消した。
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