【序章】

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  少年「―――っ」 船上の中学生ぐらいの少年が絶叫が聞こえた方を見た。目を細めて数百メートル離れた島を見つめる。 船の上では老人と中年男性が島に向かって手を合わせながらブツブツと何かを唱えていたが、その悲鳴が合図だったかのように、船はブルルとエンジンを立てて動き出した。 少年「ごほっごほっ」 苦しそうに胸元を抑えると、手に持っていた酸素ボンベの様なものを口に当てて大きく息を吸って“それ”を吸飲した。 船を操縦していた中年男性が少年に声をかけた。 中年「おい、大丈夫か」 少年「…うん…」 老人「ちょっと島から出ただけでそれじゃあ心配じゃのぉ」 中年「お前も早(はよ)う“大人”になれりゃあなぁ。あのマチって子はほんま残念じゃったわ」 少年「…‥…」 老人「そういや来週おめぇの兄さんが会いに来るんじゃろ?」 少年「うん…」 口からボンベを外した少年は船から首を出して、 「…兄さん…」 雲の一転もないまっさらな空を見上げた。
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