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「ええ、いたわね。何か知らない?」
「いや、知らないけど……」
なら引っ込んでて、と言わんばかりに紅が鼻を鳴らした。
「心当たりを探しましょう。もしかしたら垂れ幕係が張り切って、もう持って行ったかもしれない。生徒会室にはまだ一枚も来てなかったけど」
文化祭では毎年、全クラスが全長4mほどの垂れ幕を作る。
文化祭で表彰されるのは4つ。
各クラスの出し物、垂れ幕、体育館ライブ、そして出し物と垂れ幕とクイズ大会の総得点で競う、最優秀クラス賞。
もちろん、どれか1つで一位になれば、最優秀クラス賞へぐっと近づく。隣のクラスは垂れ幕一位を狙っていたのだ。
垂れ幕は、生徒会室のベランダから、中庭に向けて垂れ下げられる。それを運ぶのが生徒会の垂れ幕係なのだ。
隣のクラスメイトたちは地鳴りのように、揃って北校舎への渡り廊下へと走った。
周りに人が減ると、瑠璃がそっと聡太の袖を引っ張った。とても不安げな表情で、ウサギなら死んでしまいそうだ。
「部長、どうしよう、私鍵もなくしたままだし……」
「そうだ、鍵。昨日帰ったあと、どうしようか考えたんだけど。先に守衛さんのところに行かない?落としたんだったら、拾った人が返してくれてるかも」
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