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クラスの出店準備が一通り終わり、文化祭開始後の休憩時間に守衛室へ行くことにした。
瑠璃がずっとそわそわしているのを、聡太は遠目から見ていた。
しかし、あと5分で休憩というときに、聡太は自分自身の心配をするべき出来事が舞い込んできた。
「おい、部長!なんだよ、この小説!」
クラスメイトが数人揃って、聡太の前に文芸部誌文化祭版をかかげた。
「え、みんな読んでくれたの?嬉しいなあー、いつも余るからさ……」
「読んだけどさ!学校中が読んでるよ!なんだよ、このクラスの裏サイトみたいな暴露話」
激しく振られてバサバサ言う文芸部誌を奪い返し、聡太は反論した。
「なんだよ?暴露って。僕が編集したとき全部読んだけど、そんな作品無かったからな」
聡太は、クラスメイトに指摘された作品ページを開いた。
聡太の書いた小説はきちんと載っている。しかしその後に、もうひと作品、聡太のペンネームで書かれた作品があった。身に覚えのないものだ。
「印刷したときは全然気づかなかった……」
登場人物たちの描写は細かい。キャラクターの個性が強く、実際の人物のようにありありと目に浮かぶ。
そしてそれは、クラスの仲間たちによく似ている……。これが、教師の目に止まらなければいいが、と聡太は祈った。
「さんきゅ、よくわかった」
聡太は文芸部誌を握りしめ、クラスメイトに言った。
「やることあるから、行くわ」
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