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「瑠璃さん、すぐに行こう」
「守衛室?」
「みんなが見つける前に、早く!」
「え、鍵を?」
「それもだけど、垂れ幕だよ」
瑠璃は唇をうすく開けて、目をきょろきょろとさせた。
守衛室に行くと、聡太は「体育館倉庫の鍵は戻ってますか?」と守衛さんに尋ねた。
守衛さんは重々しくリストを取り出し、目を細めて眺めた。
「戻ってますよ。朝霞瑠璃さんの名前でね」
聡太と瑠璃は目を見合わせた。
聡太はすぐに言った。
「体育館倉庫の鍵、また今から貸してください」
「どうしたの?体育館倉庫に何があるっていうの?」そこまで言って、瑠璃はハッと息を詰めた。「まさか、垂れ幕?」
「かもね。誰かさんが隠したんだ」
聡太と瑠璃は、それからは体育館に着くまで黙々と大股で歩いた。近づくにつれて、ずん、ずん、と響くベース音。激しく叩かれるドラム。チューニング中のギター。
もうすぐ、藤虎と富岡のいるバンドの出番だ。
体育館は蒸し暑く、すでに多くの人がステージの周りに集まっていた。藤虎と富岡を見て、黄色い声が上がっている。
瑠璃は何度かチラ見したが、早足の聡太に黙ってついてきた。
聡太は、体育館内にある倉庫へたどり着いた。古びた扉に銀の鍵をさし、カチャリと錠を外した。
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