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夫人が困ったように首を傾げた後、閃いたようにバッグから何か包みを取り出した。
包みが開かれた中にあったそれは、ドロップキャンディーを模した、宝石だった。
「これは大分ニンゲンに合わせて作らせたの。一つだけでも召し上がってみて」
夫人が包みの宝石を一つ摘まんで、私の口に近付ける。
私は空腹感に負け、ついに宝石を口に含んだ。
ごろごろとした食感が口の中で転がる。
一瞬、歯に宝石が当たり、高い音が鳴った。
……途端、今まで感じ得なかった甘みが、口の中にぶわっと広がり、私は驚きと共に空腹感を紛らわせられたのだった。
「……美味しかったかしら?」
夫人が嬉しそうに微笑む。
はい、と返事をする私の姿を、宝石の沈んだ紅茶の水面が捉えていた。
紅茶に映り込んだ私の目は、新しくエメラルドの輝きを……放っていた。
......
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