エメラルドの目

4/4
前へ
/4ページ
次へ
 夫人が困ったように首を傾げた後、閃いたようにバッグから何か包みを取り出した。  包みが開かれた中にあったそれは、ドロップキャンディーを模した、宝石だった。 「これは大分ニンゲンに合わせて作らせたの。一つだけでも召し上がってみて」  夫人が包みの宝石を一つ摘まんで、私の口に近付ける。  私は空腹感に負け、ついに宝石を口に含んだ。  ごろごろとした食感が口の中で転がる。  一瞬、歯に宝石が当たり、高い音が鳴った。 ……途端、今まで感じ得なかった甘みが、口の中にぶわっと広がり、私は驚きと共に空腹感を紛らわせられたのだった。 「……美味しかったかしら?」  夫人が嬉しそうに微笑む。  はい、と返事をする私の姿を、宝石の沈んだ紅茶の水面が捉えていた。  紅茶に映り込んだ私の目は、新しくエメラルドの輝きを……放っていた。 ......
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加