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「これはお前がやったんだな」
轢き殺された死体を挟んで、ポリスメンと中年女がにらみ合っていた。
「ええ、そうよ。このバカが飛び出してきたから仕方ないじゃない」
「しかし、タイヤ跡を見ると、お前はかなり蛇行運転していたようだな」
「さぁ、どうかしら。急いでいたから覚えてないわ」
「まさか、こいつを追い回していたんじゃないだろうな」
そこで、女はバッグから社員証を取り出して、ポリスメンに見せた。
それは、有力企業の社員証だった。
「あたしは暇じゃないのよ。この会社がどれだけこの国を支えているかご存知?」
ポリスメンはそれ以上何も言えなかった。
ポリスに限らず、役所はどこも、有力企業からの支援で成り立っていたからだ。
「まぁ、なんだな。車の凹みは、お前さんが自分で修理することだな。あとはこっちでやっておく」
「ふん」
勝ち誇ったように、中年女はポリスメンを見つめた。
そして、派手にドアを閉めて行ってしまった。
これも、この時代の良くある光景であった。
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