M町の怪談「河童」

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平成の市町村合併でT村からM町に格上げされた、そんな俺の実家の話。 そこには地元じゃ有名な川が流れてて、夏になると泳ぎに行くのは住民の間では当たり前で、高校生ともなると高さ20mくらいの吊り橋から飛び降りるのが通過儀礼になってるような、多分どこの田舎にもあるような場所なんだけど。やっぱりどこの川にもあるように河童が出るって話もちゃんとある。 ただウチが他とちょっと違うのが、その昔とても暴れん坊で数千匹の子分を従えたとても強い河童で、お侍さんに退治されて逃げだし、山をいくつも越えた土地で今では神様として奉られている。 でも、きっと親分がいなくなったって子分の残党はいるよね そうなのかは知らないけど、毎年数人は溺れて死ぬ。地元の人間だったり、ちょっと遠くから泳ぎに来た観光客だったり。被害者に共通点はないと思うけど、犠牲は必ず出る。 そして、河原の崖には河童のお地蔵さんがある。 ここが不思議と落石が多い。まるで近寄るなといわんばかりに常に大小の石が落ちてくる。 危なくて誰も近寄らないけど、悪ガキには恰好の度胸試し場所になってて、河童のお地蔵さんを叩いたり蹴ったりするって遊びをやってた。俺は河童の祟りが怖くてやんなかったけどな。 結局何年かのうちに、気がつけば悪ガキどもは全員川で溺れ死んでた。普段から無茶な遊びをしてたから偶然かもしれないけどね。 俺はといえば、遊んでたら突然足を掴まれて引きずり込まれたくらいしかなかったよ。 (終)
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