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夕日が沈みかかった海が見える砂浜には誰もいなかった。
たくさんの流木と色あせたゴミが散乱し、白いさざ波が打ち寄せていた。
「海なんて、いつ以来だろ」
波打ち際まで近寄ってみたら、無性に海の水へ触りたくなった。
私は靴と靴下を脱いで裸足になると、海水を含んでクッションのようになった砂浜へ立ってみた。
「冷っ!」
思わず悲鳴が出た。
「冷たい! 冷たいー!! あははは!!」
あまりの冷たさに笑ってしまった。
「あははは!」と危ない人間のように笑い尽くしたそのとき、あたりがふっと暗くなった。
水平線の向こうに沈みかけていた夕日が完全に沈んだのだった。
「……優希くん」
優希くんの名前が呼びたくなって呼んでみたら、急に寂しさがあたりの暗さと同じように色濃くなった。
そして本心が出た。
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