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外は生憎の雨。雷も鳴っている。 だからこれは嵐と呼ぶのが相応しいのかもしれない。 雷とは不思議なものだ。 人によっては恐怖の対象。 人によっては見世物。 人によっては些事な現象。 窓ガラスを雨が叩いている。 窓ガラスを風が揺らしている。 窓ガラスを雷が照らし出す。 不意に、部屋の明かりが落ちた。 窓の外の世界も闇に包まれている。 光は、時折瞬く空のものだけになった。 一切の音が消える。 テレビの音声も、パソコンの駆動音も。 機械たちの声が聴こえなくなった。 聴こえるのは自分の息づかい。 そして心音。 世界から色が失せ、無になる。 自分が世界から切り離されてしまったような感覚。 そんな錯覚から、無音な世界には不釣り合いな電子音で目を覚ます。 友人からの心配を知らせるメッセージ。 そんな些細な事で、自分の世界は色を取り戻す。 自分の世界は、他の世界と再接続される。 雷はまだ、鳴り続けている。
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