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だだ広い石室。
その中央に彼は居た。
背を向けてただ立っていた。
「…やはり来たか。
…数奇なものだな、俺も…お前も…」
振り返りながら彼は口を開く。
「こうなるしか…無かったのかな…」
往生際悪く、彼に問う。
「何を今更…」
呆れたように、彼は言う。
「僕らが、手を取り合う未来だって…」
その言葉の続きは、紡げなかった。
「諄い!もう引き返せないんだ、諦めろ!」
――彼が、その背に魔槍を浮かべたから。
「…そんな!」
「最早言葉は不用!」
彼は魔槍を射出する。
「くっ…」
魔力の壁を展開し、防ぐ。
「砕けろ…」
彼は巨大な魔力の腕を具現化し、僕の
魔壁を殴り付ける。
硝子が割れるような音と共に魔壁が砕け、
そのまま僕は壁に叩き付けられる。
そこに、魔槍が突き刺さる。
激しい痛みと共に意識が薄れる。
薄れゆく意識の中で、
「どうして…こうなってしまったんだろうな…」
そんな言葉を聞いた気がした。
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