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「結婚を前提に付き合ってくれ」
そんな言葉は死んでも言えないと思っていた。
むしろ意地でも言わないと思っていた。
出会いは普遍的なそれだった。
別にパンを咥えてぶつかったとか、
雨の日に傘に入れてあげたとか、
そんな事は全くない。
彼女と特別仲が良いという訳でもなかった。
顔を合わせれば下らない事で言い合いばかりしていた。
そんな言い合いが、楽しかった。
それに気付いたのは彼女に会わなくなってから。
他の人と話していても、何かが足りない。
満たされない。
…また会いたい。
想いが募っていく。
「おや、久しぶりだね」
そんな願いを叶えるように、彼女は現れた。
その事が、堪らなく嬉しかった。
「どうした?人の顔をじろじろ見て」
この気持ちが何なのか理解している。
「何だ、何か言いたいことでもあるのか?」
驚かせてしまうだろう。
それでも、この気持ちを伝えなくては。
あのさ――
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