3人が本棚に入れています
本棚に追加
それから俺は晴れて鈴蘭さんと恋人同士になった…のだが。
恋人になって早々俺は出張を強いられ、最初から遠距離恋愛をすることになってしまった。
しかし鈴蘭さんも快く了承してくれて笑顔で送り出してくれたし、何より彼女が待っていてくれることは、遠方の地で(それでも国内だが)一人で仕事をする俺にとって、一番の心の支えだった。
「ただいま~、やっと仕事終わったよ」
「もー遅いよ~ずっと待ってたのに~」
「はは、ごめんごめん」
あれから毎日彼女と必ず電話で話すようにした俺は、今まで知らなかった彼女の一面をいくつも見つけることができた。彼氏の特権というやつだろう。
電話から聞こえてくる鈴蘭さん…もう鈴蘭と言おうか、鈴蘭の声はいつも喫茶店で喋っているそれとはすごくかけ離れていた。
たぶん緊張しているんだろう、声が小さくて仕事中に俺の愚痴を聞いてくれる時の明るさはあまり感じない。
それと、彼女はすごく寂しがり屋だ。
電話がかかってくるのを心待ちにしているようで(それでも仕事の邪魔にならないようにと彼女の方から定時まで電話をしてくることはなかった)、俺のとりとめのない会社の愚痴なんかを、彼女は毎日毎日文句も言わずに受け入れてくれて、この時間さえあれば仕事のいかなるストレスにも耐えられる気がする。
最初のコメントを投稿しよう!