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ここは俺が社会人になってからずっといきつけの喫茶店で、今俺が会話しているのはこの喫茶店でアルバイトをしている女性である。
彼女は鈴蘭(すずらん)さんと言い、歳は俺の三つ下の22歳。
とても愛想がよくほかのお客からの評判もよい。かくいう俺もほとんど彼女目当てで来店しているようなもの…俺は彼女が好きだった。
今日は客入りもそこまで多くなく、こういう日はいつも俺は彼女に仕事の愚痴を聞いてもらっていた。
彼女はいつも笑って「大変ですね」と慰めてくれるので、俺はそんな彼女の笑顔が見たくて時間さえあれば可能な限り高い頻度で来店していた。
「俺はちゃんと仕事してるんですよ、それを回りのやつらどいつもこいつも適当なこと言いやがって…ひどくないですか?」
「椎名さん、いつもいつもご苦労さまですねえ……はい、コーヒーどうぞー」
ぶつくさと上司の文句を漏らし続ける俺に、彼女はにこりと笑うと静かにアイスコーヒーを差し出した。
「ああ、ありがとうございます……ああ、やっぱりうまい」
「ふふ、いつもありがとうございます」
彼女はにこっと笑ってお盆を胸の前に持ち小さく頭を下げると、彼女のポニーテールがぶらんと小さく揺れ…小走りでカウンターへと戻っていった。
その後ろ姿を目で追いながら、俺は鞄の中につっこまれた出張に関する書類のことを思い出して大きなため息をついた。
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