鈴蘭とインナーセルフ

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「それじゃまた来ます…ありがとうございました」 「あ、はーい!またいつでも来てくださいね!」 カウンターを掃除しながら顔だけこちらに向け、にこっと笑う鈴蘭さんの顔を見て俺は顔が熱くなるのを感じ、そそくさと店を後にした。 (はぁー…あの人かわいすぎ、もうダメになりそう) もうここ何年かの間、通えば通うほど彼女への俺の気持ちは止まることを知らない勢いでどんどん膨らんでいき、7~8年くらいが過ぎた今でもそれは止まる兆しがない。 しかし、年齢=彼女いない歴の超絶奥手な俺はなんといまだに連絡先の交換すらできておらず、そんな自分が自分で悲しくて仕方がない。 このつかず離れずの今の距離感はなんとなく心地よいとも思う。 でも、それだけでは満足できなくなっている自分もいた。 今のところ彼女には男の影は見えないし、やっぱり勇気を出すなら今なのかもしれない。 というのも俺は今日、さきほどさんざん愚痴を漏らしていたハゲ上司に出張(それなりの遠距離、飛行機を要する)を言い渡されていたのだ。 新事業の立ち上げとシステム運用にあたり、開発した会社のスタッフが現地に赴くことはこの業界ではたまにあることだ。俺はその部署の直属スタッフだったため、今回の出張のメンバーに選ばれたということになる。
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