食材の屠殺

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それを聞いて、父は眉をひそめた。 「それじゃ駄目だな。鍛えすぎた肉は固すぎて美味しくない。日ごろの飼料も駄目だ」 なるほど。 そういう視点で食材選びするといいのか。 やっぱり父は凄い。 いつも新しい発見がある。 それと、父とこんなに話すことができるというのが嬉しい。 いつも父は私のことを見ていないから。 「次の食材候補は?」 「2枚目は戸引真琴さん。食べ物は何でも……」 「論外だ。こんな太っている人をお前はは食べたいと思うかい?」 話を全く聞かずに、写真だけで答えが出た。 言われてみればそうだった。 ぶくぶく太った戸引さんが美味しいかと言われれば…… 「ごめんなさい。お父さん。この脂肪が逆にソーセージにすると美味しくなるのかもしれないって思って……」 「真凛。覚えておきなさい。この肉は、いわばフォアグラを作るために狭い部屋に閉じ込めらたガチョウのようなものだ。そして太らせるためだけに考えられた飼料を与えられる。そうすると美味しい肝臓はできるかもしれない。でもそれだけだ。その肉は食べられたものではない。この肉はそんな肉だ。さっきの運動しすぎの肉もそうだが、お前の学校はそんな極端な飼育しかされていない肉しかいないのか?」
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