手記は多忙

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「秋彦、これ……軽く一万文字分くらいはあるぞこの一日の手記。これを一晩で書くのか?」 「ああそこ気になる? ほら俺手書きで人が話すスピードでもの書けんじゃン?」 「でも、ボイスレコーダーの録音時間は軽く半日を超えているし」 「それは問題ない。ボイスレコーダーだけじゃなくてメモもちまちま取ってるから。欲しい時間帯のとこに飛べるし、三倍速までなら何とか聞きながら書けるし」 「化け物かお前。ちょっとやってみろ今」  俺は秋彦に数学の授業のノートを渡す。そして秋彦から返ってきたノートには、実際に俺の喋ったことが一言一句逃さずに書き切られていたのである。それもしっかりと読める丁寧な字で。 「すげえ……」 「だろ? 俺の筆速は音速レベルだぜ」 「今の一言で少し評価が下がったかな」 「何でだよ。ていうか、『このタイトル』の方がもっとやばいぞ。『タキオン』って言っちゃってるもん」 「タキオンってなんだよ?」 「男のロマンさ…………」  『このタイトル』というワードに違和感を覚えながらも俺はそれを流すことにした。 「俺、今までお前のこと、ただの独り言言っちゃう可哀想で頭のおかしい同級生だとしか思っていなかった。ごめんな秋彦」 「もしかして俺、今無駄に傷ついた?」  佐々倉先輩も秋彦も苦労していたのか……俺も頑張んないとな。
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