〈scene 2〉

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〈scene 2〉

気になる存在は声から始まる。 ルックスではない。 声とその声で発せられる言葉。 静かに響くリリックテノール。 小さなスマホのSNSの画面の中で、いいねが入ると嬉しかった。 おそらく僅かしかない、ほっとする時間を、私の投稿を読むために費やしてくれたのだと思うと。 コメントをもらうと何度も繰り返して読んだ。 言葉の裏に秘め事が隠されてはいないかと、勘繰りながら。 返信のための一言一言を慎重に選ぶ、やりとりに許される文字数に限りがあるから。 そして、彼のコメントを頭の中でリリックテノールの響きにのせる。 何度も。何度も。 リフレインするうちに、私は満たされていく。
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