第1章

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「そうですかぁ……」 ちょっと残念と感じた布記子だった。 「ごめんやで」 「いや、全然、気にせんといて下さい」 するとヨシ子は地味なハンドバッグから、地味な柄のハンカチを取りだし、それを目頭に当てた。 「ホンマはな、ムッチャ嬉しいねんで…… 布記ちゃん、そない言うてくれて、ありがとーな…」 「バアバ、どないしたん?」 背後から、よく会話を聞き取れていなかった孫が、顔を覗かせた。 「ううん。なんでもない。 おばあちゃんな、今、メッチャ嬉しいねん」 「ふうーん」 わけは判らなかったが、心亜は、それ以上訊ねることはなく、シートに深く座った。 霧の接点 完 2017、10、1
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