11人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうや、オレ、アノ時の犯人や。強盗殺人犯なんや」
などともカミングアウト出来るハズもなく
(あいつ、気付きよったんやな……
どないしたらエエねん…)
と、さらに病んでいたに違いない。
(はっ!もしかして夫は自殺?)
もうどうして良いか判らない夫は、自分で転んで自殺した。
いや、さすがにそれは、やろうと思っていても出来るものでもないし、死なない確率のほうが高い。
アレは自分でも思ってもみない不慮の転倒事故であろう。
アノ時、布記子が助けるそぶりを見せない上に、救急車をなかなか呼ぶ気配がないようなので、悟ったのだろう。
「やはり妻は気付いていた。そして、オレの死を望んでいる」
と。
だから助けも求めず、なすがまま、身を任せた。
それならこのまま死んでもエエと。
自分はそれなりの罪を犯してしまったのだからと。
(そうや、きっとそうなんや)
助手席の義母は、実家の隣の迷惑頑固ジジイのボヤきを始めていたが、布記子は、そんなの耳に入っていなかった。
「……てな、その頑固ジジイに、一言言うたってんやんかぁ~。そしたらな、ジジイ、なんて言うた思う?布記ちゃん」
「え?あ、ああ。お隣さんて、水田さんですよね。なんて言わはったん?」
「『近くで見ると、アンタ、可愛いなぁ~』やて」
「ホンマですか~?」
布記子は、クスッと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!