第1章

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「ホンマや、もう~。きしょく悪い、きしょく悪い。話にならへん思って、帰って、戸締まりしたわ。 身の危険感じたし」 ヨシ子は震えて見せた。 「同じ年くらいなんちゃう? もしかして、向こうさん、気があったりして」 「やめてや~、もう~。 あんな小太りで額にシワが5本も入っていて、鼻が、くるりんしてて、唇もシワだらけの、ピーマン顔の年寄り。 イヤやわぁ~」 「フフフ」 確かにその通り。 よー観察してはるわと、布記子の口から 素直に笑いがもれた。 車は近鉄吉田駅から5分、住宅街に入った。 自宅の前に車を停車した布記子は 「ちょっと待っててな。心亜呼んで来るし」 と、急いで玄関ドアを開け 「ここあ~、おばあちゃんと買い物行くよ~」 と、音量レベル5くらいで叫んだ。 「はあ~い」 と、2階から声がし、小走りに降りて来た心亜は、勢いよく車の後部座席に乗り込んだ。 「心亜ー、買い物のアト、ご飯食べに行くでー。おばあちゃん、おごったるから、何でも好きなもん食べてエエよ」 ヨシ子は身をよじり、後ろの孫にそう言った。 「ホンマー? それやったら、ハンバーグと唐揚げ食べたい」 心亜は明るく元気よく答えた。 やはり子供は、ハンバーグと唐揚げやねんと、ばかりに。 「おーおー、エエよー。ステーキでも焼肉でも天ぷらでも」 祖母は、うんうん頷き目を細め、孫を見つめたままだった。
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