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「ホンマや、もう~。きしょく悪い、きしょく悪い。話にならへん思って、帰って、戸締まりしたわ。
身の危険感じたし」
ヨシ子は震えて見せた。
「同じ年くらいなんちゃう?
もしかして、向こうさん、気があったりして」
「やめてや~、もう~。
あんな小太りで額にシワが5本も入っていて、鼻が、くるりんしてて、唇もシワだらけの、ピーマン顔の年寄り。
イヤやわぁ~」
「フフフ」
確かにその通り。
よー観察してはるわと、布記子の口から
素直に笑いがもれた。
車は近鉄吉田駅から5分、住宅街に入った。
自宅の前に車を停車した布記子は
「ちょっと待っててな。心亜呼んで来るし」
と、急いで玄関ドアを開け
「ここあ~、おばあちゃんと買い物行くよ~」
と、音量レベル5くらいで叫んだ。
「はあ~い」
と、2階から声がし、小走りに降りて来た心亜は、勢いよく車の後部座席に乗り込んだ。
「心亜ー、買い物のアト、ご飯食べに行くでー。おばあちゃん、おごったるから、何でも好きなもん食べてエエよ」
ヨシ子は身をよじり、後ろの孫にそう言った。
「ホンマー?
それやったら、ハンバーグと唐揚げ食べたい」
心亜は明るく元気よく答えた。
やはり子供は、ハンバーグと唐揚げやねんと、ばかりに。
「おーおー、エエよー。ステーキでも焼肉でも天ぷらでも」
祖母は、うんうん頷き目を細め、孫を見つめたままだった。
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