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ポゥーー……
ボォーーー!!!
遠く、近く汽笛が鳴り響く中。
壊れかけた浮遊島を伴って広がる青い空の半分を、灰色の雲が覆っていた。
何も知らず雲の上を飛んだ者にとっては、一面に広がる雲の原は、確かに雲海と呼ばれる現象に見えたかもしれない。
しかし、この雲の塊は、自然に出来たモノではなかった。
なぜならば……見よ。
浮遊島が撒き散らす瓦礫の雨を避けたすぐ側に、海から巨大な筒が天に向かって突き出ている。
その数、無数。
一本一本の煙突の下には、蒸気機関が稼働し、信じられないほどの量の水蒸気と石炭を燃やした煤で出来た人工的な雲を、モクモクと吐き出し。雲海を作りあげていたのだ。
そんな、何も無い海に煙突が乱立して雲を作る不思議な雲の上。
浮遊島から飛び出したグライダーが、墜落してすぐ、ひと際大きい煙突に付けられた汽笛から海の端から端まで届くほど響いたのが合図だった。
突然、煙突の乱立する海中から、色とりどりの二人乗りの小型高速艇が何台も現れると、ぱーーっと蜘蛛の子を散ばしたようにあちらこちら、思い思いに散ってゆく。
そのなかでも、最速を誇る深紅の艇が一機、沈みゆくグライダーに、今、たどりついた。
…………
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