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ヴェリトッドは広大な領土と、それに比例した長い海岸線を誇る大国である。
隣国との国境には天嶮がそびえ、まるで誰かが柵でも設けたかのような佇まいでこの国を見守っている。
また気候にも恵まれ、一年のうちに四季が巡る。
目まぐるしく通り過ぎていく四季の風は、それぞれの豊かさでもってヴェリトッドへと贈り物を運んでくる。
そんな豊かな国土であるから、必然のようにして農畜産業が盛んである。
農業大国とも呼ばれるヴェリトッドの、基幹にして起源。
その生産力は凄まじく、ヴェリトッド一国の食料生産力のみで十国を養えるとも言われる程だ。
故に、人々は大地への感謝を込めて、ヴェリトッドのことを“天恵の王国”と呼んだ。
以上が、ヴェリトッドの概要。
ただしこれは、古びた図書館でこんもりと埃を積もらせた文献から得た知識にしかすぎない。
ぼくにとってのこの国は、だだっぴろい国土の真ん中に王都があり、あとはまばらに小さな農村が点在するだけの、時代遅れの田舎大国である。
王都からは遠く離れた辺境の、小さな小さな町パンジア。
その町からまた少し離れた、これまた小さな牧場がぼくの住処だ。
古いながらも雨風を凌ぐには申し分のない家を持ち、小さいながらも食べるには困らないだけの収穫を得られる畑がある。
森を切り開いて作った畑は、粗末ながらも自慢の畑だ。
今はまだ農作のみだけれど、いずれはモンスターを飼って畜産もやってみたいと考えてる。
畑もまだまだ拡大して、牧場を大きくしていきたい。
なんてことを考えているぼくは立派なヴェリトッド国民で、この国が好きだ。
陽の光を浴びて、鍬を振るい、土に塗れるこの国での生活が、なかなかどうしてぼくの性分に合っていた。
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