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__時の流れは残酷だ。
何もしなくても時間は過ぎていく。
時間が過ぎるということは、未来へと進んでいくということである。
生きている間は...__。
いつの日だったのだろうか、小さい頃、夢を見た。
四角い形をした透明の壁の建物がたくさん建っていて、おかしな薄い服を着ている人々がたくさんいて、手の大きさと同じような石版を耳に当てて誰かと話している、そんな不思議な光景を見る夢を見た。
着物を着ているのは自分だけで、それを周りの人々はそれが非常識に思っているかのように見つめてきた。
怖くて走り出して、薄暗い道を進み、そして、気がつけば屋敷に戻っていた。
その事を晴明様に話した。
「ほう...そんな夢を見たのか。」
「はい。でも、自分では眠った感覚がなくて、屋敷に戻っていた時には寝床ではなく、廊下で佇んでいたんです。」
「ふむ...輝久よ。それは夢ではなく現実かもしれない。」
「え?」
晴明様の口から出た言葉は、自分__"輝久"にとってはとんでもない事だった。
「輝久、それは"時間旅"というものかもしれない。輝久が見た光景は、過去か未来の世界であろう。つまり照久のその体験は、とても貴重なこと、ということなのだぞ。」
「じ、じかんたび...?」
「まだ幼い輝久には理解できないであろう。時間旅は"百鬼夜行道"を通じて行き来することができる。その百鬼夜行道を通れるのは、妖、妖怪、幽霊など、人ならざるもののみ。輝久がその道を渡ったということは、何か輝久に力が宿っているのか....。」
全く理解できない。晴明様の言葉がまるで呪文のようで、耳に入るが通り抜けていく。
とにかく自分が体験したことはとても貴重なことだと知った。
だがしかし、何故自分にそんな力があったのか、わからなかった。
その後も時間旅が頻繁に起こることが多くなり、何度も四角い建物の街を見るようになった。その分その世界にある見たことのないものをたくさん見ることが出来た。男が着る"すうつ"という服、"さんどいっち"という食べ物などいろんなものを見た。見たものを晴明様に何度も話した。
「はっははは、そのようなものがあったのか。」
「はい!あ、それから、こんな形をした...」
そしてその時間旅を続けるにつれて、自分の体に変化が訪れることを、この時の自分は知らなかった。
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