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ある日、晴明様は悪霊祓いのために出かけることになった。そのせいか、百鬼夜行道が見つからなくなった。
夜いつも現れるはずなのだが、今日に限っては現れなかった。
仕方なく寝床を出て屋敷内を探した。
何処を探しても見つからない。
ならば、屋敷の外なら見つかるはず。
そう思い、自分は屋敷を出て百鬼夜行道を探しに行った。
屋敷の周りは森で囲まれており、夜になると木々が空を覆い尽くしてしまい、月光すら照らされなくなっていた。そのため森の中は暗く、妖が現れやすいのだという。
自分の手元には何もなく、辺りを照らす明かりがなかった。真っ暗で、道に迷いそうだった。
肝心な百鬼夜行道も見つからず、ついには帰り道もわからなくなった。
暗闇の中、その場に座り込んでしまい、思わず泣き出してしまった。
怖い。殺される。
屋敷を出たことを後悔し、嗚咽を漏らしながら溢れんばかりの涙を流した。
「誰か...っ...助けて...晴明様...っ...。」
いるはずのない晴明様の名前を呼び、ただ救いを求めた。ついには大声で泣いてしまった。恥ずかしいとか、みっともないとか、そんなのどうだって良かった。今自分の中にあるのは、後悔と悲しみだけだった。
嗚呼...何故百鬼夜行道を探しに行こうとしたのだろうか...。晴明様はもう屋敷にいないのに...。
「輝久ァ!何処にいるんだ輝久ァ!」
...父の声だ。向こうから聞こえる。
やっと救いが来たのだと、その時自分はほっと胸をなで下ろした。
...だが...。
「早く輝久を捕まえろ!アイツは年を取らねえ妖だったんだ!!」
...思わず耳を疑った。
それは自分のことなのか?年を取らないってどういうことか?
慌てて立ち上がり、声のする方の反対側へと走った。...いや、"逃げた"といったほうが正しいか。
ただがむしゃらに走った。怖くて、怖くて、たったそれだけで走った。
時間旅なんてしなければよかった...。
「輝久!こっちだ!」
目の前には出かけたはずの晴明様がいた。
晴明様は自分を捕まえようとする様子ではなかった。自分を助けてくれるのだろうか?
「晴明様!」
自分はとにかく晴明様の元へと走った。
後ろで追いかけてくる奴らを引き連れて。
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