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【Farmhouse Tea】
5月 環と理
鮮やかに芽吹いた柔らかな新芽が風に揺れる。
高く、朧雲がゆっくりと流れて行く。
「なあ、いつの間にこんなん作ってたんだよ」
「んー?……成人祝い、だったかな」
「七年も前!?なんで言わねーんだよ!」
「えー?そんな実験場の茶葉いらねーって言われたら泣くし」
そこは、おれだけの箱庭。彼のための、小さな秘密基地。
「……要らないなんて、言うわけないだろ」
「うん。もっと早く言えばよかった。 来年も一緒に初摘みしような」
未来の約束をしながら、また一つ、新芽を手折る。
夏も近付く八十八夜。
萌える若葉の中で二人、笑いあった。
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