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最近の僕は、ぼんやりと自分の未来について考える。僕の人生は一体どうなってしまうのだろう。
…幸せになりたい…
この世に生まれ落ちた人間が必ず願う事、それさえも今の僕達には儚く遠い夢。愛する人と出会い、恋に落ち、結婚する。そんな切ない僕の夢はきっと叶う事はないだろう…
どこまでも続く大海原を睨んでみる。この時代に生まれ落ちた事を悔やみながら。
あの日、僕は母と畑仕事に精を出していた。届くはずはないと思っていた召集令状は、父親のいない僕の家にも容赦なく送り付けられた。夫に先立たれた母は僕の成長を何よりも楽しみにし、幼い妹達にとっては僕は兄であり父親のような存在だった。僕の存在はこの家族の唯一の支えだった。それなのに…
母は気丈にふるまい、いつものように日常を過ごした。妹達も必死にそれに倣った。でも、一番下の妹は、どこへ行くにも僕の後をついてくる。まるでもう会えないと分かっているみたいに、僕にまとわりつきおんぶをせがんだ。
僕はそんな幼い妹達にたくさんの話をした。戦争のない日が必ずやってくる事、幸せになる権利がある事、多くの本を読んで自分自身を高める事。妹達の
未来は絶対に奪われない。僕は強くそう信じて、幼い二人に何度も話をして聞かせた。
そして、出征する前日まで、それは続いた。もし僕が帰って来れなくても、二人の心に僕の言葉が残ってくれていればいい。だって、その言葉の数々が僕自身なのだから。

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