文化祭ラビリンス

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 たぶん両方だ。  そんなことを思いながら、自分もそれくらい振り切れてしまえば楽なのに、とも思ってしまう。そう、人間なんか滅んでしまえば、むしろ、自分で滅ぼしてしまおうか、くらいにまで振り切ることができれば、もっと楽に生きられる。 「はあ……面白くねえな」  くせっ毛の頭を一掻きする。じょりじょりと品もない音を立てながら、仁はもう一度屋上の固いアスファルトへ寝そべった。  クラスの中で目立つ存在ではない。むしろ、教室の隅の方で陰気な仲間と、陰気なオーラで共鳴し合ってひそひそと趣味に興じる日々だ。無論、文化祭の模擬店などにやる気はなく、三年最後の文化祭だと燃える、高校生活をそこそこ満足に謳歌している連中の生温い熱気を迷惑にも浴びつつ、ここまで来た。  夏休みに来た呼び出しメールも、二、三通を無視したところで来なくなった。これで、面倒ごとに苛まれることもなく受験に集中できるというものだ。  教師も教師で、そんな非協力的な生徒にも慣れっこのようで、下手に催促をしたりもしなかった。  そう、それでよかったのだ。夏が明けるまでは。  クラスの中で異変に気づいたのは夏休み明けの初日。つまり、始業式の日だ。     
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