堕ちる男

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目の前の全てが消えてしまったあとは、何事もなかったかのように闇が広がっていた。 それまでと変わらぬ暗さで。 ぼう然としたまま、どれくらい時間がたったのか。 悲鳴。 通報で駆けつけてきた救急車。 サイレンの音。 何もかもが虚構の世界の出来事のように思えていた。 ただ一つの真実をのぞいて。 音もたてず真っ逆さまに落ちていった男。 最後に目があった瞬間、こちらを見てふわりと笑った。 それが、この世のものとは思えないほどの美しさで、脳裏に焼きついて離れなくなった。 私の中に残されたのは、それだけ。
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