8人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
目の前の全てが消えてしまったあとは、何事もなかったかのように闇が広がっていた。 それまでと変わらぬ暗さで。
ぼう然としたまま、どれくらい時間がたったのか。 悲鳴。 通報で駆けつけてきた救急車。 サイレンの音。
何もかもが虚構の世界の出来事のように思えていた。 ただ一つの真実をのぞいて。
音もたてず真っ逆さまに落ちていった男。
最後に目があった瞬間、こちらを見てふわりと笑った。
それが、この世のものとは思えないほどの美しさで、脳裏に焼きついて離れなくなった。
私の中に残されたのは、それだけ。
最初のコメントを投稿しよう!