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「死ぬくらいの覚悟があるなら、何でもできると思います」
「何でもできますよ。 ただ、したいことがないだけ。 生きていたくないんです。 意味がないように思えて苦しいから」
抑揚のない声で返され、私は肩を落とす。
ダメだ。 やめよう、これ以上は。 相手には何もない、ただの空っぽ。 抜け殻だ。
あの時、この人は生と死の境界線上に立っていた。 私は一瞬の、その姿に魅了されただけ。
わかっているのに、これ以上、相手に何に期待しているのか。 見放すことがどうしてもできない。 見放すことは見殺しにすること。 もったいないと思う。 何でもできるのに、すごくもったいない。
「何にも、ないんですか? 欲しいものも?」
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