堕ちる男

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先に休憩入っていいよと店長に言われ、夕食用のパンとおにぎりを手にして屋上に向かった。 働きはじめたばかりの頃は律儀にスタッフルームで食べていたけれど、狭くてタバコ臭いので程なくしてやめた。 他の従業員の愚痴や悪口に付き合わされるのも億劫だし、それに自分には休憩中、必ずやらなくてはならないことがある。 乗り込んだエレベーターのRボタンを押すと、急いでポーチからスマホを取り出した。 屋上につき、定位置にしている貯水タンクの端のブロックに腰をかける頃には、既にお目当ての画面にたどり着いていた。 私は慌てて、そこに並んだ文字を目で追う。 『あー、なんなの? まじでクソうざ! さっきコンビニでピノちゃんが大泣きして、まわりのオヤジとかババアに嫌な顔されたんですが』 『迷惑そうな目で見てたきたヤツ全員、今すぐ死ね! あんたらの老後の年金だれが払うと思ってんだよ!』 『こっちはこの国の未来を担う人間、わざわざ苦労して産み育ててやってんだよ? 子連れってだけで、どうして社会で肩身の狭い思いしなきゃなんないわけ? テメェらと違って、欲しい物も遊ぶ時間も我慢して、我が子のためだけに生きてるんですけど!』 『なのに母親なら何とかしろよ? みたいな雰囲気。 なんの苦行だよ? なんの罰? 家事も育児も手伝わないダンナと、泣くしか能のないムスメの面倒みるのに必死で、毎日ストレスまみれで暮らしてる、こっちの身にもなれよっ! ちょっとはわかれ世間のバカども!!』
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