昼日中

2/7

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
文化祭のくそまずい、いかにも素人のガキが作ったというような、まあ実際その通りである焼うどんをかっこむ。発泡スチロールの頼りない器に、死んだ巨大ミミズのようなうどんがへばりついている。くたくたになった人参は短冊切り、厚さと長さはバラバラ。噛んでみると仄かに土の味がする。いや、これは高校生たちの泥と汗と涙の、いわば青春の味……。 「おいしい?」 「普通」 真っ暗闇の会議室の奥で透明な声がそう問いかけた。もそもそとうどんをすするというより噛み噛み咀嚼し、乾いた喉を癒す水もないので溜まった唾を飲み込んだ。ごおおおごおと天井部分で作動するクーラーの音だけ煩わしい。腹が食わねば戦はできぬ、俺……そう、例えば少年Tあたりにでもしておこう、少年Tのその声に向こう側の声は静かに笑う。いくさね、いくさ。さくさく。くさくさ。最近くさくさ、しているね。 暗幕に覆われた会議室。お化け屋敷の光避けに使うそれはさすがに強力で、外の太陽光などまるでもろともせずこの四角い空間をただの黒い箱にしてしまっている。きんきんに冷えた冷房の風が闇の濃度を更に攪拌して滑らかにするようで、俺は、そう、少年Tは何だかそれが心地いいのだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加