昼日中

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向こう側の声の主は見えない。声の調子からして少女であろう、どこか儚げで頼りなく、透き通った氷を叩いて響いたような声。字面だけ並べたらものすごい美少女が出てきそうなもんだが最近はアニメ声を売りにするブスも結構いるもんだから油断できたもんじゃない。 しかしまあ不思議なもので闇に目は慣れても、少女の姿だけはいつまでたっても探し当てることはできないのだった。まあ、少年Tだって褒められた理由でこの会議室にいるわけではないのだから、姿を見ない見られないのはお互いにとってきっと都合がいいのだけどね。 ぼとり、とうどんの切れ端が一本床に落ちる。3秒ルールを適用してもいいのだけど、そこまで食べたい代物じゃないし、この床に今まで何百人の人間がその足でトイレのタイルを踏んだのだろうかと考えるとやにわに気分が悪くなった。 「うどん、少しあげようか?腹減ってるだろ」 Tのありがたい申し出にも関わらず、くさくさとわけわからん呪文を唱えている少女も迷うそぶりもみせず、いらないなどという。 「アンモニアソースがけ」 「バクテリアの方かもしんないけどさ……」 Tは器に残った残りのうどんを飲み込むと、床でくたばっているうどんを
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