昼日中

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ティッシュで救出し、発泡スチロールと共にゴミ箱に投げ入れた。ティッシュで包んだそれは死んだばかりの柔らかい生き物のような感触がした。まだハエもたかっていない生暖かい猫のようだった。 「慣れておかなきゃね」 歌うように少女が言った。Tは答えず首を振る。 今朝の光景をTはふと思い出す。段ボールで張り巡らされた要塞のような教室。ヤブ蚊がどこからか入り込んだらしく、スカートを短くした少女たちがぺちぺちとさかんに自分の腿やふくらはぎを叩いていた。8月の午前8時の光は眩しく、窓ガラス越しにも生徒たちのまだまだ発展途上な柔肌を焼き殺すかのように舐め回していく。 ゆりあという女生徒がいた。真っ白くむっちりとしたふくらはぎの少女だった。というかそれくらいしか特徴がなかった。ゆりあは、控えめに言うところの友達のいない暗い女の子であり、クラスでは浮き輪が欠かせない存在だった。はっきり言えば煙たがられていたと言っても過言ではないだろう。そんな状況一番本人が自覚しているだろうに、文化祭の準備をサボらない彼女は偉いなと人ごとながらにTは思っていた。サボる勇気もなかっただけだろうが。 蒼白く、死体というよりは怨霊のような
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