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顔で甲斐甲斐しく働くゆりあの扱いは、それなりに結構酷いものであったがこれも文化祭が終わるまでの話だ。頑張れゆりあ負けるなゆりあ、彼女自身の頭にたえず流れていたキャッチフレーズに違いあるまい。温室のような教室で、担任教師の言葉を聞きながら額に玉のような汗をうかべながらゆりあは最後の力を振り絞り立っていた。そしてぶっ倒れた。あっけない幕引きだった。さようなら、ゆりあ。クラスメートの薄い冷笑とともに運ばれていく彼女をぼんやりTは見つめていたのだった。
「ゆりあのことすきになっちゃったの?」
「そんなわけないじゃん」
一言呟いて、今度は立ち上がる。
「そんなわけ、ないじゃん!!」
「だよね」
Tにも選ぶ権利はある。もちろんゆりあにも選ぶ権利はある。世界は等しく日が照らす。ゆりあに魅力を感じることなど、あり得ないしあってはならぬことなのだ。
しかし、あの、太陽の光よりも白かったゆりあのふくらはぎだけ傷跡のようにじんじんと響く。蝉の声。花火のこだま。打ち寄せる波。くさくさくさ。くさくさしているの。ああ。Tは気だるげに喉を反らす。くさくさしているんだよ。くさくさ。
闇の中、時計の針の動く音だけ聞こえる。ち
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