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ある時、僕はある妻の愛人だった。きっと夫よりも愛されていたと思う。でもそれは、新しいものを気にいっていただけだ。子供だって、おもちゃは新しいものに限るだろう。
でも僕はその愛を注がれても、決して満たされることはなかった。まるでヒビの入ったグラスみたいに、愛を注がれては、また零した。
次第に僕たちの関係は終わった。というより、僕が相手にしかったのだ。嫌いになられる前に、嫌いになる。それが僕の信条だった。
僕はその女性と別れたあとの、まだ日も高い時間に、ひとつの部屋で硫化水素を飲んで自殺をした。
僕はまた繰り返す。同じ道を、同じ人生を。
◆ ◆
その人生は、退屈だった。
親は離婚しており、お金もあまりなかった。でも父親のいいだしっぺで、大学には通わせてもらっていた。
その大学も退屈だった。特に人間関係が。
学校ではナンパが流行っていた。それに乗っかる必要もなかったのだが、勉学にもバイトにも、励まない僕は暇つぶしで付き合っていた。
僕に付いてくる女の子なんて、ひとりもいなかった。僕は変な髪の毛をしていたし、顔もあまりよくない。そして何よりこの言葉だ。
「俺って何千回って死んでるだぜ」
これが俺の常套句だった。きっと意味はわからない。でもわかってくれる人がいることを、僕は切に願った。
次第に友達は減った。僕も付き合わなかった。
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