0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
でも僕は、なんとなくナンパを続けた。なんでかはわからない。なんとなく、なんとなく、本当になんとなく。
僕は大学構内から、駅前に場所を変えた。その方が友達に会わなくて済んだから。
僕は駅前で声を掛ける。
「お姉さん、お茶でもどう?」
「君たち、これからカラオケで行かない?」
「ねえ、可愛いね。今学校帰り?」
僕に付いてくる女の子なんて、ひとりもいない。さあ、目の前の信号が変わって、それでだめなら帰ろう。
信号は赤から青になる。次第にどこから湧いたかわからない、人の波に僕は押される。
そして僕は目の端に、変わった女の子を見つけた。それは顔が可愛いからだとか、胸が大きいとかじゃない。
死んだ目だ。それも飛び切りの。途中音楽を聴いていたのか、イヤホンを引きづって歩いている。面白い。
「お姉さん、これからお茶でもどう?」
思いっきり無視をされた。でも
「僕って何千回って死んでるだぜ」
僕は言う。
彼女は聞いてないのか、フラフラ駅に向かって歩く。
僕も帰ろう。そう思って僕はバックの中からパスケースを取り出す。
「待って」
さっきの女の子だ。
「どうしたの?」
「さっきの話、本当?」
たぶん、僕の常套句のことだろう。
「うん」
――私もなの。
◆ ◆
最初のコメントを投稿しよう!