高校生の関君 <1>

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 美佐雄が変わった。  こいつはいつもニヘラっとしていて、つかみどころがなく、おまけにバカだ。勉強ができるわけでもなく、運動神経だってたいしたことはない。なんでも中流の俺の下にいるくらいだ。  一人っ子で、友達も少ない。  生方という将来ハゲそうな(あくまでも俺の勝手なイメージ)名前の薄暗い男といつも一緒にいる。生方は眼鏡をかけた真っ白をとおりこして青くみえるぐらい顔色の悪いヤツで、いささか量の多い髪をもてあましてボウボウだ。  まあ、美佐雄の友達としては合格点だろう、冴えないあたりが最高のマッチングだ。  美佐雄はいつも漫画を読んでいる。どんだけ漫画に金かけてんの?と疑問に思うほどに。  少年ジャンプにマガジン、ヤンマガ、月マガ、ヤンジャン、モーニング、イブニングにスピリッツ。ゴラクも読んでいるし、最近はビックコミックオリジナルにも手をだした(ビッグコミックにいくならモーニングツーのほうが若者っぽくないか?「たそがれ流星群」より「聖☆おにいさん」だろ、普通)  俺は読みたい漫画だけでいいので、買うなら断然コミックだ。そうしたほうが効率的じゃないかと、美佐雄に言いたいが一度も言ったことがない。  そもそも俺は美佐雄と口をきいたことがないのだ。それなのに俺にはけっこうな量の美佐雄データがインプットされている。 「関ってなんで宇多のことガン見してんの?前から不思議だったんだけど?」  いつも一緒にいる親友の溝口に、今日そんなことを言われた。もちろん、俺は愕然とした。こっそり眺めているつもりが、他人にバレている。  ちなみ俺の名前は 「関 宏之」  美佐雄の名前は  「宇多 美佐雄」  宇多美佐雄は漢字がごつい。非常にイカツイと思う(どうでもいいと溝口は言った)  話を冒頭に戻すと(変わったってやつね)美佐雄が漫画じゃない本を読みだしたのだ!  岩波文庫「プラトン入門」R・S・ブラック著  これはタダごとではない!
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