高校生の関君 <1>

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 いつものように弁当を食べながらボンヤリ窓の外を見ていた。向かいにすわる溝口は携帯片手にメールを打ちながら、箸を使っている。実に器用、俺に真似できない芸当だ。  溝口は幼馴染的なヤツで、小学校からずっと一緒だ。中の上(上の下?)で俺より確実にランクが高い。腰が軽くてマメで当たりが柔らかく、適当に面白い。別段顔が素敵でははないが、内面を映した面差しは好感がもてる。  よって、それなりにモテる。  中学、高校、ずっと何かしら彼女がいて、別れても次がすぐに見つかる。  ドラマにでてくる、仲間内でグルグル彼女を交換してるくせに嫌味がない、そんなヤツ。そんな溝口の女関係は、俺にとっては最高の抑止力になっているわけ。  はい、そのとおり、俺はゲイってやつだ。  たいてい親友を好きになったりして痛い目に逢うのが相場だ。親友に気持ち悪いなんて言われたら落ち込んで立ち直れないと思う。  その点、俺がフラフラっと溝口に傾きそうになっても、バーンと隣に女が常にいるので現実が俺を諭すわけだ。 『はい、ヒロ君、ストップね?』←現実さんの声  おかげ様で、無傷でなんとかやってこれた。手に入らないと思えば苦にもならない。ブラピを彼氏にしたいとか、ディズニーランドを私物化したい、そんなバカバカしいことを考えたって何も痛くない。ドラえもんがいたらいいのにな、と妄想するのと似ている。  そういうことだ、最初から「無理」というカテにデフォっておけば、痛みから無縁でいられる。俺のことヒネクレ野郎だ、とか思いましたか?ええ、ええ。自覚しています。でも所謂マイノリティーな分類に属すると、自衛が必要になる。  真正直すぎると痛い目にあう確率が高いんですよ、あなたよりね。  だから俺はこんな考えを貫きとおして17年、若さゼロに成長した。
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