高校生の関君 <1>

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 さて、話は美佐雄のことでしょ?と思っていますね、すすめます。  運動神経がないのは言った。球技大会や体育の授業の有様を見れば一目瞭然だ。 バカだ、これも言った。それは大量の漫画を読んでいたりするのと、成績順位からの分類。俺もあまり頭がいいとはいえないが、それより下なら、確実にアホいと思う。 「太くてたくさんより、細いの沢山だから、まだマシだよ」  生方の髪に関してコメントしているのを耳にしたとき、もっとマシな慰めがあるだろう呆れていたら美佐雄がニヘラっと笑った。  それはいささか子供っぽく、てへペロみたいにアザトクない。思わず俺までニヘラっと返したくなるような類の笑み。  溝口のいうガン見の原因はこれだ。  美佐雄のニヘラ顔。  俺はたぶん、この表情が好きで見てしまうのだろう。あくまでも表情というものであり、美佐雄を好きなわけではない。しかしよく見てしまうから、美佐雄情報が少しずつ蓄積される結果になった。  皆目見当つかないのだ。  何故にプラトンなのか?『マンガで読み解く哲学』←こんなのだったら理解できる。でもよりによって岩波文庫。  俺がもっと解せないのは、そんなのを読みだした美佐雄に対して生方がノーコメントなことだ。当たり前に受け止めているが、受け止めすぎじゃなかろうか?  美佐雄の変貌が不可解だ。おまけに、俺のお楽しみである、ニヘラってのがナリをひそめてしまった。  まったくもって残念至極……きわめて遺憾。どうしてしまったんだ、美佐雄!
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