静かで優しい夜のこと

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狭いアパートの一室、307号室。 私はそこで一匹、拾い物の小さなソファに腰掛けていました。 今は夜の九時過ぎ。夕食の冷やし中華の出来に満足し、皿を洗い、お風呂に入り、一日の終わりを感じながら、のんびりとテレビ番組を観る時間。 答案用紙に丸をつける。バツをつける。三角をつける。今日の朝と昼は全てその作業に捧げたので、さすがの私もすっかりくたびれているのでした。 グラスに入ったビールをちびちびと飲み、市販のクラッカーをつまみます。クラッカーは種類様々なチーズと一緒に、一口でサクッと食べるのが、美味しさの秘訣。ネット上で教わったその秘訣を守るように、私は懇切丁寧にナイフでチーズを塗っては噛み、塗っては砕き、塗ってはビールと飲み込み、美味しさを引き出すように奮闘して、私なりに静かな夜を楽しんでいました。 「おいしいです」 ぽとりと、言葉が溢れて、一緒に笑みも生まれました。
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