静かで優しい夜のこと

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私は、異星からやってきた侵略者です。 海王星と天王星の間に、私の母星はあります。 私の母星は、光の屈折する現象によって、肉眼では見ることができません。ですので、一旦星から出てしまうと、帰ることはできません。 そんな星から──はるばる地球を侵略しにやってきたのはいいのですが、宇宙船が故障したおかげで、地球に着く頃に持参した侵略兵器はおろか生活用具までボロボロ、身体もズタズタな状態で、まるで隕石のように無防備なまま、私は地球に降り立ってしまったのです。ちなみに、着陸した場所は、地球の中で日本と呼ばれる縄張りの、東京都という地区にある渋谷川でした。 あの時の虚しさ、そして絶望感。 今でも忘れられません。思考回路がブチっと切れる音とともに、置物のように固まっていたのを、未だに忘れることはできません。 あぁ、そこからどれだけ苦労を重ねたか。 侵略なんてとてもできる状況ではないので、地球で暮らすことに決めてから、どれだけ苦労を重ねたか。 外見だけなら変化(私は身体を様々な動物に変化させることができるのです)するだけでいいのですが、人間の趣味嗜好、生活習慣、社会、常識、言語について理解するのにどれほどの苦労があったか。怪しまれて正体が露見する危機は何度もありました。またそれ以上に、あの警察という人間に様々な因縁をつけられて追いかけ回されるというトラブルもありました。仕方ないではありませんか。擬態といっても服は用意できませんし、お金なんて知りませんし……あぁ、しかしどうして人間は服を着なければ外を歩けないのでしょう。今でも理解に苦しみます。 「つらかったです」 言葉が、漏れていきます。 ビールは感情的にさせてくれます。この漏れた言葉をどうすれば良いのでしょう。
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